和声進行の秘密 2

次の曲は、有名なフォスターの「主人は冷たい土の中に」という曲です。
この曲に伴奏をつける場合、次のように主要三和音(T、W、X)だけで伴奏をすることも十分可能です。

これでも十分よいのですが、4小節目のXの和音(Gの和音)に着目してみましょう。
Gの和音は、この調(ハ長調)の属調であるト長調の主和音(Tの和音)です。
仮にこの曲の3〜4小節目を一時的にト長調の旋律であるとみなしてみましょう。
主和音に進む傾向をもっとも強く持っているのは属和音(Xの和音)であることは、前に述べました。
そこで、このト長調のTの和音(G)の前にト長調のXの和音(D)を配置してみましょう。
先ほどの主要三和音だけの和音伴奏に比べると、ちょっと雰囲気が変わりましたね。
このように、Xの和音を属調の主和音と見立て、その主和音に進行する傾向を持つ属調のXの和音を前に配置して
音楽の流れをスムーズにすることは、よく行われることです。
例えば、次の曲もそうしたつくりになっています。
【茶色の小びん】
この「茶色の小びん」の2小節目に主要三和音にはない「D」の和音が使われていますが、これも上の例と同様、3小節目の
「G」の和音を属調の主和音と見立て、一時的に転調したととらえてその調のXの和音、つまり「D」の和音を配置して流れを
スムーズにしようとしているのです。下の楽譜のように、主要三和音だけで構成するのと聴き比べてみると、断然こちらの方
が変化に富んでおもしろいことがおわかりいただけると思います。
この「Uの和音」を借用して「Xの和音」への動きをスムーズにするのは、単にそればかりでなはなく、変化を持たせるという
意味もあってよく使われるテクニックですので、編曲や伴奏づくりの際にはとても有効です。
さて、話を「主人は冷たい土の中に」に戻しましょう。
この曲の2小節目はWの和音(F)ですが、これは下属調の主和音です。そこで、その下属調の主和音に進みやすい下属調の
Xの和音をその前に配置してみましょう。
下属調はヘ長調ですが、そのXの和音はCの和音です。ところが、もうすでにCの和音になっています。
そこでもう一工夫。主和音に進む傾向がもっと強いのは「X7」の和音、つまり「属七の和音」でした。
そこで1小節目の後半に「X7(C7)」を置いてみましょう。
そしてもう一工夫。Cの和音を「ミソド」と重ねてC7(ミソ♭シ)への動きをなめらかにするために、間にCM7(ミソシ)を挟んで
みると、一番上の音が「ド→シ→♭シ」と半音進行になります。さらに次のFの和音を「ドファラ」と下から重ねた形にすれば、
その動きは「ド→シ→♭シ→ラ」と半音進行でつながり、おもしろい形になりそうです。
楽譜にしてみると下のようになります。
なかなかおもしろい響きと動きになったではありませんか。こうしてみると、他の小節に比べて2小節目が変化に乏しくさびしい
感じがします。そこで、主旋律の「ド」と「ラ」を含んでいてしかも次の和音(「C」の和音)に進行しやすい和音を2小節目の後半
に挿入してみたいと思います。
こんなときに使えるのが「減七の和音」です。そこでCdimを転回してFの後につなげてみましょう。
これで2小節目もスリリングな動きになります。
このような工夫をしていくと、さらにたくさんの変化を生み出せると思います。
いろいろとお試し下さい。

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