和声進行の秘密

和音には、それぞれ個性があり、性格があります。作曲をする場合には、そうした和音の性格を踏まえて響きだけでなく動きを
つくりだしていますが、自分なりの伴奏づくりをするなど編曲をする場合にも
そうした和音の特徴を生かして編曲をすることで、独自の味付けをすることができます。
ここでは、そうした和音の特徴やそれを組み合わせて流れをつくる秘密を見ていきたいと思います。

【各和音の特徴と働き】
Tの和音 Tonic
「Tの和音」は、主和音とも言いますが、名前が示す通りその調を代表する和音です。
そのため、すべての和音の中でもっとも安定感がありますので、この和音を聴くと人はホッとし落ち着いた感じが
しますし、終止感を持つことができます。そこで、ほとんどの曲はこの主和音で終了します。
また、その調を代表する、いわば「主役の和音」ですから、どの和音に進んでも違和感がありません。
Wの和音 Subdominant
「Wの和音」は、下属音の上に重ねられた和音ですから「下属和音」と呼ばれます。
楽曲中の状態によって、あるいは聴く人によってさまざまに感じ方は異なるでしょうが、主和音に比べて浮揚感や開放感
が感じられるでしょう。
それがもっとも強く感じられるのが「主和音→下属和音」と進行したときでしょう。
また、この和音には、主和音に向かおうとする性質と、この後に見る属和音(Xの和音)に向かおうとする性質のどちらも
兼ね備えています。
TonicSubdominantの性質をもっともうまく利用したのが、賛美歌などの最後に歌われる「アーメン」のコーラス
でしょう。「W」の和音の「T」の和音に向かおうとする性質、そして「T」の終止感・安定感を巧みに生かして、コーラス
が終わって落ち着いた安堵感を表現しています。

Xの和音 Dominant
「Xの和音」は、属音の上に重ねられた和音ですので「属和音」と呼ばれています。
この和音は、Tの和音(主和音)に進もうとする性質が強く、属七の和音になるとその性質はもっと強くなります。
和音の進行例
もっとも基本的な進行例 もっとも基本的な進行例は
次の二つでしょう。
T→W→T

T→X→T

典型的な終止形 T→W→T→X→T

この進行を図で表すと
右のようになります。
※W、Xの和音は
基本形で示しています。
終止形のバリエーション 上の典型的な終止形に手を加えることで、さまざまなバリエーションが考え出されました。
【その1】 Wの和音は、「ファラド」の和音ですが、「ラ」と「ド」を共有するEの和音(ラドミ)をTの後に
加えることで、循環コードが生まれました。
「T→E→W→X」→「T→E→W→X」(以下繰り返し)
【その2】 さらに上のWの和音は、「ファラド」の和音ですが、これを「ファ」と「ラ」を共有するAの和音(レファラ)に置き換えて、違った味を出すこともできます。
「T→E→A→X」→「T→E→A→X」(以下繰り返し)
【その3】 上の例のAの和音(レファラ)は、この調(ハ長調)の下属調(ヘ長調)の平行調(ニ短調)の主和音ですが、そのニ短調の主和音に進みたい和音、つまりXの和音はAの和音
ですので、AmをAに置き換えて配置することも可能です。
「T→Y→A→X」→「T→Y→A→X」(以下繰り返し)
このように、関係調(近親調)の和音を借用することで、いくつものバリエーションをつくりだすことができますので、
きりがありませんが、その借用和音をうまく使いこなすことで一時的に転調し、曲にちょっと違った味付けをすることが可能です。
よく使われる例を次のページで見てみましょう。

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