動機づけ研究からみた
「学ぶ意欲」の仕組み

 子どもは過去にある活動をして「嬉しかった・楽しかった」という経験があり、さらにその際、この活動がまわりの親・教師・友だちから
認められ受け入れられる(他者受容)と、「自分もやればできるんだ」(有能感)「だから次も自分でやる」(自己決定感)につながり、その
結果として知的好奇心や、達成したい、挑戦したいという心情につながっていくことが考えられる。
 
 ここで注意したいのは、「他者受容」を感じること(他者受容感)で、学校では授業が「安心して勉強できる場」となるとき生まれるもの
である。
 最近、学校における緊急課題として指摘されている「学級崩壊」や「授業崩壊」、「いじめ」といった問題が解消されなければこの「他者
受容感」は保障されない。ぜひとも授業設計のなかに、この「他者受容感」をもてる場を入れたいものである。
 
 また、新井邦二郎(1995)は「意欲はどこから生まれるか」に関して、「学習意欲の相対的強さの変化」の発達モデルを示している。
 それを要約すると、次のようになる。
 
 @自己目標実現のための学習意欲(社会化された内発的学習意欲)は、発達とともに
   高まる。
 A規範意識による学習意欲(成績的学習理由)は、小学校中高学年をピークに下がる。
 B内発的学習意欲(興味的学習理由)は、最初高いが次第に下がる。
 C賞罰による学習意欲(対人的学習理由)は、最初高いが次第に下がる。
 
 そして、これら四つの学習意欲の中で、人が自立するとともに自己目標実現の学習意欲に支配されるようになる、と指摘している。
 これらのことから、子どもが「学ぶ意欲」をもち、それを持続するためには、自己の目標をもつことが大切になる。

                                   「学ぶ意欲をどう掘り起こし、高め、評価するか」
                                    小野瀬 雅人(鳴門教育大学教授)
                                    雑誌「教育展望」 2003.9月号 p.36..37



「学ぶ意欲」を
掘り起こす条件

 実態調査や動機づけに関する研究の結果から、「学ぶ意欲」を掘り起こすための条件が浮かび上がってくる。
 すなわち、子どもが意欲を示す行動すには、次のような要素が含まれているようである。

 @意欲を示す行動に対して過去に肯定的な見方(楽しかった、面白かった)をしている。
 A意欲を示す行動は、目的意識と結びついている。
 B意欲を示す行動は何らかの主体的活動あるいは体験を伴っている。

                                      「学ぶ意欲をどう掘り起こし、高め、評価するか」
                                       小野瀬 雅人(鳴門教育大学教授)
                                       雑誌「教育展望」 2003.9月号 p.36..37